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「晴れてよかった。」「きっと、そらでつながってる。」の誕生秘話とは!?『ゆるキャン△』キャッチコピーについての秘話を大公開!

「晴れてよかった。」や「きっと、そらでつながってる。」など、
TVアニメーション『ゆるキャン△』を表現したキャッチコピーが誕生した秘話を、
これまでのキャッチコピーを生み出してきたプロデューサーの堀田将市氏にお伺いしました。
 
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▼「晴れてよかった。」
子供の頃から、生活にあふれるちょっとした言葉に強く惹かれていました。
例えば、お土産でもらったお菓子の箱に添えられている小さな紙に書かれた言葉。
映画のポスターに書かれている、セリフのようでそうでもない言葉。
テレビCMの、だいたい最後のほうで発声される短い言葉。
これらを『キャッチコピー』というのだ、と知ったのは少し大きくなってからです。
 
アニメーションの宣伝をする上でも、キャッチコピーは欠かせない存在です。
様々なやり方がありますが、本作では責任を持って僕が書かせてもらっています。
原稿用紙や便箋に書き連ねて推敲し、監督やチームのみんなに見せて意見をもらってまた書いて……という作り方。
……なのですが、実は1つ目の「晴れてよかった。」というコピーだけは、僕ではなく、
メインライターの田中仁さんの発案でした。


あれはたしか2017年の春のことだったと思います。
『ゆるキャン△』のホン打ちを終えて、監督たちとそのまま飲みに行きました。
その席で僕は、書いていたコピー案をお見せしたのですが、なんだかしっくり来ていない顔を全員にされてしまったのです。
いや、京極監督あたりははっきりと「うーん、もう一声ですねえ」とか言っていた気がする。遠慮がありません。
「じゃあキミたちがやってみなさいよ!」「書いてみたらいいじゃないの!」と内心では憤慨しつつ、
ふと気づいたことがあったので訊いてみたんです。
 
「僕たち、ロケハンでキャンプに行ったじゃないですか。
 初日は雨でしたけど翌日は綺麗に晴れて富士山が見えた。そのとき、どう思いました?」って。
 
すぐに仁さんがつぶやいたのが、「『晴れてよかった』かなあ」。
これだ、と思いました。
 
絵とキャッチコピーの関係は切っても切り離せないものです。このキャッチコピーが載るのは、
最初に公開したティザービジュアル……本栖湖から富士山を眺める5人が描かれたあの絵。

 
これは実は自分たちが行った最初のロケハンの経験に基づく絵です。
つまり、我々が抱いたあのときの感動を言葉にしてあげればいいのだと確信しました。
この瞬間、『ゆるキャン△』のキャッチコピーの作り方が決まったのです。
 
それを受けての第二弾が、「きっと、そらでつながってる。」です。
 
 

▼「きっと、そらでつながってる。」
本編5話ラストシーンと凄まじくリンクしたおかげで、今や本作を代表するコピーになってくれました。
さて……ここで衝撃の告白をしなくてはなりません。
実はこのコピー、あのラストシーンを想定して作ったものじゃなかったんです。
(5話とコピーの関係性を美しいと言ってくださったすべての方、本当に申し訳ございません!)
 
以前京極監督がとあるインタビューの折に「(あのコピーは)5話のシーンを想定して書かれたものです」と仰っていたり、
「すごく綺麗なシーン」とキャストさんからもご好評を頂いていたので、
「いや実は違いまして……」なんて野暮天なことを言い出すわけにもいかず、秘密を抱えたまま2年くらい経ってしまいました。
そういえばあの当時は「このコピーはこれこれこういう理由で書いた」とか誰にも伝えていなかったんですよね……。
弁明をさせてください。
 
あのコピーが最初に載ったのは、『オフショットイラスト』という名称で公開した5枚の絵です。

 
あの絵は、「女の子たちの日常の一幕を切り取る」というコンセプトで発注し、
京極監督が見事なラフを仕上げてくれ、完成したものです。
先程申し上げた「絵とキャッチコピーは切っても切り離せない」で考えたとき、
オフショットイラストにつくコピーも、当然ながらそれを表すものでなくてはなりません。
 
なでしこたちが生活する空は、彼女たちにとっては同じもの。
そして、自分が何気なく見上げているこの空の向こうに、もしかしたらなでしこたちが息づいているかもしれない。
『ゆるキャン△』を楽しんでくれるすべての人達の空も、たぶんつながっているし、つながっていてほしい。
そんなことを思いながら走ったペンは、「きっと、そらでつながってる。」というコピーを書き上げていました。

 
自分としては、かなり会心の出来栄えだったのですけれど、スタッフからの反応は(当時は)例によってイマイチでした(笑)。
(今思えばあのとき、自信満々にコピーの意味を説明しておけばよかった)
ですがあの5話が放送されたことで、自分としては想像もしなかった形で、あのコピーに魂が吹き込まれました。
5話に救ってもらったのです。5話があることで、言葉に意味が宿ったのです。

思いも寄らない方法ですべてのものがリンクする。
アニメーションの凄みを思い知った、とても気持ちのいい体験でした。
本当に感謝しています。
 
そんな体験をしてしまったものですから、どういうわけか、キャッチコピーに対するスタッフからの期待……というか威圧が、
回を増すごとに高まっているのを感じて、書く側としては重圧に押しつぶされそうな気分になっています。
そもそも毎回、最低30本くらいコピーを書いて、それでようやく1つにたどり着く、みたいなやり方なのです。
一度でもしくじったら「へっ、結局堀田もたいしたことねーな」とか思われそうで、日夜震えながら生きています。
そんな恐怖と戦いつつ、今日までいくつかコピーを書き上げることができました。
 
 
「これからも、わたしだ。」(シリーズコピー)
「わたしたいじかんが、あります。」(へやキャン△メインコピー)
「さみしいも、たのしい。」「たのしいも、さみしい。」(SEASON2ティザーコピー)
「ココロは止まっていられない。」(SEASON2ブリッジコピー)
 
 
どれも個人的な思い出があるのですが、それはまたいずれかの機会に。
さあ、次のコピーの締め切りはいつだろう……。
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◆堀田将市氏プロフィール
1986年東京生まれ。『ハナヤマタ』『あんハピ♪』『賭ケグルイ』などのアニメーション作品を製作。現在は株式会社ディー・エヌ・エーに所属。